童貞爆弾

小田急の電車に乗り込み、座ると向かいの席（列）の右端に、もたれ合うカップルがいた。女が、男に。自分の左を気にすると、そこにももたれ合うカップル。こちらは、右側にいる男の左足が、左側にいる女の右足に絡んでいる。僕が乗るまでに、無意識のうちの相乗作用があったのだろう。

相乗作用？　こんな言葉あるのかな。意味が通じればいいか、相乗効果、の前段階でしょ？　いや、でも一応グーグルで調べてみよう、あ、注文したマックミニそろそろ出荷になってるかも。あ、なってたなってた。決勝は山崎邦正ｖｓヒロシかあ、あ、ＣＭだ。もう８時半か、巌窟王のためにＨＤ空けとかなきゃいけないから３話分先に焼いておいたマシュマロ通信の先週のやつをＤＶＤに焼こうっと、ジャスミンの話だね。ジャスミンって沢近愛理ちゃんっぽいよね。

部屋でダーツを投げながらマシュマロ通信を見終わって（いい、話でございました）、ＰＣの前に戻ってきて、さあ続きを書こうかと思って、相乗作用という言葉にぶつかってがく然としている。

あれじゃん、落ち着きのない子。なんとか症候群。脇に文庫本転がってるのにいたっては、記憶にない。記憶にあるのは、あ、アイス食べようかなと、パソコンの脇に置いておいた、コンビニの匙を見て思ったの。

さて、各駅停車の電車は走り続ける。お構いなしにもたれるカップル。今僕が席を立って、この汚らわしい車輌から降りたなら、次にカップルが乗り込んできて、僕の座っていたこの席で新たにもたれ合うんだろう。

救急救命24時の大泉洋の髪形を見て、元ガンバの磯貝が現役時、大きな試合で目立ち、ビッグクラブに自分を売り込むには、変な髪形の方がいいと言っていたのを思い出した。９８年フランスワールドカップで中田英寿はカラーリングにおいてそれを実践していた。

参宮橋駅。僕は席を立つ。ドアから出ると、乾いた冷気。踵を返して手でメガホンを作り、「『カップルが、もたれ合わなきゃいけない車輌』か！」とドアに向かって叫び込んだ。メルヘン爆弾ならぬ、童貞爆弾だ。発車の合図とともに、青ラインの入った銀色の車輌が新宿へ向かっていく。携帯電話を取り出し、時刻を見る。遅刻決定。でも１０分も待てば、次の各停電車がやってくる。それに乗るだけだ。降りたらバイト場に向かって走ればいい。息が切れて、風邪がぶり返すかもしれない。

このアイス食ったらブックオフ行こうかな。