サマーソニック

朝、ビデオで昨日の『MADLAX』を見ているとドアをノックする音。無視していると部屋中の電気製品が悲鳴を上げ、停止した。毎月恒例、でんこちゃんのいたずらだ。

部屋が暑いし、今月中に引っ越す部屋を決めなければならないので外出。財布の中は300円。下北沢駅前で、いつものようにおばさんが街頭アンケートを実施しているのに、今日は初めて引っ掛かってみる。ちょちょちょいと答えて、500円の図書券がもらえると聞いたので。買いたい書籍の山は頭の中に屹立している。

スナック菓子についてのアンケート。まずは年齢層、職業などをさささと答える。続いてある形状のスナック菓子について各味に対する興味を9段階で。順に6,3,5と答える。穿つことのない正直な答えに、意外な反応が返ってきた。「残念ながら今回は対象になりません、ごめんなさいね」。

恋風』の耕四郎風に言うならば、「外れちまったなぁ、外れちまった」である。ちなみにこれ、過剰な社会的自意識の発露だと思うのだが、30前のサラリーマンが言うより、25歳のフリーターが言うほうが説得力あるでしょ。

バカになれなかったわけである。どれだけ譲っても、マーケティングなんていうものを信じなければならない環境に僕はいないわけだが(まだ体力があるので)、そんなことはこの際関係なくて、500円分の図書券をゲットするためにどうすべきかということを考え、行動すべきだったのである。そのためには、バカになることが必要だった。このようなミスを天然でやってしまったことに、恐怖すら感じる。

もしかするとうまく伝わっていないかもしれないので別の言い方をすると、センスの問題である。

センスなんていうものは、この世に存在しないものだ。それがあると決めてかかっている点に、マーケティングに代表される大きなカネの動きの不条理がある。それがないと分かっていて、カネを得るために、求められているセンス(それは評価の道具として、外的圧力により浮かび上がる陽炎のようなものだ)を理解し、駆使するのが、物を作らない仕事をする人間の、半ば義務ではないかと自責するわけである。

話をもう一度整理しておきたい。今何の話をしているかというと、財布に300円しかないプータローが街頭アンケートに引っ掛かり、その場で断られてまたサンダル姿で歩き出したという、駅前の1コマの話である。

ダイエーでサッポロポテトの新製品シーフードバーベキュー味とビタミンCジュースを買って残金107円、声を掛けてくるアンケート仲間のおばさんを無視して青い袋を開ける。オレ発信で、世田谷の空に夏の匂いが拡がった。