フットジャグ

1月の終わりから渋谷で長期のアルバイトをしていたのだが、面白くないのでまったく日記に書かなかった。多くの日で冒頭となった「昼、渋谷で立ち読み」というのは、昼休憩に立ち読みをしていたわけである。

4ヶ月の契約も一段落し、社員も合わせて総勢20名でお疲れ会が催されていた。のに、声かからず。

今『しあわせにフリーター生活を送るための25の方法』という本を企画中なのだが、フリーター「しあわせ」の一つに、「足場を固める」というのがある。これは主に実家に寄生している男性の常套手段で、彼らは1日8時間なり9時間なりの稼働時間中に受ける自分のストレスを少しでも軽減するため、「目上に取り入り、目下に優位性を示す」ということの積み立てを、極めて事務的にこなす。

自然、同時に派遣されてきたほぼ同年代のアルバイトとの会話は、そのための探りとなる。おなじみ「優越感」の陣取りゲームだと考えてもらってほぼ相違ない。そういうのに対する反感が、恐らく会話の端々に出ていたのだろうと思う。

「ラーメン好きですか?」

「あ、俺ラーメン、好き、ですねぇ」

山頭火行きました?」

「は、下北のなら」

「下北の山頭火不味くないですか?」

「え、下北のしか行ったことないんで」

「日によって味違うのかな? 武蔵はどうですか?」

「あれ? やっぱ俺ラーメン好きじゃないや!」

「ははは」

「ははは」

みたいな会話の積み重ねは、彼らの足場を崩しはしないまでも、餃子の王将の床のようにヌルヌルさせる(あるある!)のだろう。

僕にしてみたらそんなバイト先に未練などないはずでは、とお思いだろうが、どうしてこんな恨み言まがいのことをいうのかというと。

宮地真緒似の可愛い女の子がいたの! 俺だってモテタイノ!!

そして、5月のシフトがメールで届く。延長決定。お母さん、僕は明日からも渋谷へ通います。山下書店へ、立ち読みをしに。アニメイトで、買い物をしに。山頭火へも、行こうかな。塩味のスープ、美味しいといいな。