イノセントワールド

友人を誘い、新宿でソバを食ってダーツ。いつも行っているゲーセンでさて始めようかと準備していると、店員が「ここビリヤード台なんで、荷物を置かないでください」と注意しに来る。「いや、確定じゃなかったんで」「はい?」「ちょっと置いてただけですから」「ビリヤード台に物を置かれては困るんで」カッチーン。

こういう状況で妥協しているとキリがないから、ということで買ったばかりのジュース(メッツ)を片手に店を出る。

ダーツバーに入るため、無理して飲み干したメッツの空き缶。辺りを見回してもゴミ箱がない。ゴミ箱がないんだから道端に捨てて良いというわけではない。だから自販機を探して、脇に置いてある空き缶専用のゴミ箱に・・・ない。自販機の脇に、ゴミ箱がない。こうなると、脇に捨てても良いということになってくる。ポケットに手を突っ込んだりしながら堂々と脇に置くと、客引きのため近くに立っていた黒スーツのオッサンが肝の据わった声で「おいここゴミ捨て場じゃねーぞ」と。いやいやいやいや。

こういう状況で妥協していてはキリがないということで、どう見ても堅気ではないそのオッサンから目をそらさず、持っていた空き缶を地面に落とす。ちょうど一昨日の『爆裂天使』でジョーがやったような要領で。少しばかり残っていた中身が不規則な曲線を描き、着地、と同時にコンバースのシューズに縫い付けられた白いマークがまさに流星のごとく通り過ぎる。ゴールキーパーパントキックの仕業で蹴り上げられたメッツの赤い空き缶は、帯を銀色に輝かせながらオッサンの眉間へ一直線。カツーン!

全速力でコマ劇の方へ走り出す僕と、西武新宿の方へ飛んでゆく友人。歌舞伎町「リアル缶蹴り」のスタートだ。

などと大喜利で気を紛らしながらダーツバーへ。終電で帰宅。

恋風』第4話。日本における自然主義文学の先駆けである田山花袋の『蒲団』を引くまでもなく、妹の下着を嗅いだ主人公の自涜はごく自然で、それ自体は「無罪」としてよい。不自然であり罪悪なのは、結果に向けて全てのシチュエーションが織りなされている、つまりは自然主義を逆手にとって「13歳年下の妹でオナニーする」という行為を受け手に認めさせる、姑息さである。

縁側で爪を切る少女の背中を、僕は『イノセンス』ラストシーンのバトーと同じ目で見つめるしかなかった。