文学賞に落ちました<7>

本気で芥川賞を狙って書いたのに群像新人文学賞の一次選考にすら引っかからなかったので解説付きで載せれば伝わるんじゃないかと思って始めた企画の第6弾。

(これまでのあらすじ)日課として一日一匹のカラスを蹴り殺している売れないピン芸人「トーキョーボーイ」は、ひょんなことからコマ劇場で氷川きよしのコンサートを観覧する。からからに乾いたおばちゃんたちの黄色い歓声は黄砂となり、コマ劇は砂漠と化す。おもちゃのトカレフで砂漠に花を咲かせることに成功したトーキョーボーイは、色んなものでずぶぬれになりながらも、満足顔なのであった・・・

 赤黒い足ふきマットで丁寧に靴底の粘液をふき取り、コマ劇場を出る。外はもうかなり暗い。この時間、コマ劇前野広場は居酒屋の客引きが支配する。更に夜が深まればこれに加えて「一名様、キャバクラ!」「ゲイバーいかが?」「カラオケですか?」「はいルーマニア」「お兄さんおっぱい!」など、それぞれに託された、それだけでは意味の通らない言葉を夜明けまで繰り返すようインプットされた人間たちで埋まってくる。本を読むことを禁止された未来の人々が、『ガリヴァー旅行記』なら『ガリヴァー旅行記』を一言一句丸暗記し、その人が死ぬ前には次の人間に伝授するという映画を昔テレビで見た。客引き達は映画と同じように、誰か、彼らが尊敬している人物のサクセスストーリーを絶やさぬため、その断片を夜通し暗唱しているのかもしれない。
 頭上に気配を感じ反射的に身構える。寿司屋の壁から飛び出しているマスターカードの看板の上にカラスがいた。この時間に、めずらしい。俺のスニーカーについた血の匂いでも嗅ぎ取ったのか、威嚇するように一度羽ばたき、飛んでいった。この辺のカラスはどこを根城にしているのだろうと考えて、すぐにある場所が浮かんだ。散歩がてら、行ってみてもいいかもしれない。その前にまず、腹ごしらえだ。

妖精さん)ここ しょくじのばめんとか かかないの?

 ウミガメの産卵を扱ったテレビ番組で、孵化した子ガメが、重ねたチップスターのような体を一生懸命引きずって波間へ急ぐ。しかしここぞとばかりにカモメやその他の天敵が狙っており、無事たどり着くのは生まれた子ガメの数パーセントです、というようなナレーションが入る場面で、潮が満ち引きする早送りの映像が流れたり流れなかったりする、その潮の満ち引きに似ている新宿駅の人の流れ。午前零時を過ぎ、終電も近づいてきた今の時間、人々が、まさに潮が引くように、中央東口へ続く階段へ流れ落ちてゆく。
 今日は週末なので特に目に留まるのが、セックスの種だ。酒に酔ったサラリーマンやOLの体の一部が雄しべ&めしべと化し絡み合い、受精予約行動をとっている。この予約行動が、しかし彼らの性的関係の中で目的化していることは一目瞭然だ。セックスしたいのと同じくらい、セックスしたくないのだ。男も女も。タンポポの綿毛のように不健康なセックスの種舞う東口を離れるべく、流れに逆行する。家へは無理すれば歩いてでも帰れる距離だし、朝まで新宿で潰して、早朝にカラス殺して帰ってもいい。
 ダイエットペプシツイストを飲みながら、終電が過ぎて人通りもまばらになり、勢いを失いつつある客引きの合間を縫って歌舞伎町を進む。レモン風味の爽快なげっぷと一緒に最後の一口を飲み込み、空き缶入れを探すが見つからない。インディーズ系とは言えコンビニの前に空き缶入れがないというのはどういうことだ。道端に捨ててもいいということか? いや、そんなことはない。社会人ならそんなことをしてはいけない。今朝立ち止まったマッサージ店の看板があるビルの脇に、赤い自販機を見つけた。ライバル社の空き缶で申し訳ないが、この場合仕方がない。はいはい、ごめんなさいよ、と自販機脇に備え付けの赤い空き缶入れに、もしくは、壁と一体化した、空き缶入れに、捨て、られ、ない。空き缶入れが、自販機の脇のどこを探しても、見つからない。これはどういうことだ。道端に捨ててもいいということか?
 答えはイエスだ。
 堂々と、軽くポケットに手など入れながら、んーと腹を鳴らしている赤い自販機の脇に、白と黄色を基調としたダイエットペプシツイストのボトル缶を置こうと、すると、
「おい兄ちゃんそこゴミ捨て場じゃねえぞ」
 客引きなのか、ビルの前に立っていた、まあ堅気ではない中年黒スーツ。目を見ることなく、え、と発声してみた。
「え、じゃなくてよ、ここゴミ捨て場じゃねえんだよ」
 こいつの懐には、俺のトカレフとジャンケンして勝てる道具が、道具と書いてチャカが潜んでいるだろうか。いくら歌舞伎町でも、全員が全員、そんなものを携帯しているわけではないだろう。顔を上げて黒スーツを見る。浅黒く脂ぎった、チャバネゴキブリのような顔面の上で、ほんの一瞬、目が泳ぐ。俺の目はそれ以上に泳いでいるのかもしれないが、たぶん、あいこ以上だ。缶を持った右手をチャバネに向けてまっすぐ伸ばし、ボトルキャップ部分を右手人さし指と親指でつまんで持つ。おチョウシ一本追加ねの型だ。チャバネの口が何か言うべく開きかけた瞬間、指を放す。落下するダイエットペプシツイストの空き缶の腹を狙い、ゴールキーパーパントキックの要領で右足を振り抜く。縦の前方回転をしながら上昇した缶底の縁がチャバネの眉間に当たり微かに鳴り響く高音は、既にコマ劇の方へ走り出している俺の耳には届かない。歌舞伎町を舞台にした「リアル缶蹴り」のスタートだ。逃げるのは元々得意だが、これは鬼がはっきりしているので逃げ甲斐がある。

(つづく)

みんなはどうかしらないけどセンパイエピソードってどうも好きじゃないっすね〜。少女受けはいいのかもしれないけど。まあ、結局はヒカリちゃんのセイチョウタンだったからいいか。

あ、プリキュアの話です。

昨日はネギまをいっぱい見た。7話から10話くらいまで。言ってみればネギだくである。ネギだくなのであーる。評判通り、ドッヂボールの話よかったねー。アヤナミのニセモノみたいな子の方がコノカちゃんよりめだってもーてるやん。どないやねん。

なんでネギまを4話くらいみたかというと、たまっていたからである。ウチのおじいちゃんHDDレコーダーは99タイトルしか録画できないのだが、99行っちゃってたのである。残り時間はあるのにタイトル数の関係で録画失敗するという、***みたいなことに(ここ、後で上手いこと例える ※と書いておいて放っておく)なっていたのである。先々週のプリキュアハロモニ。そう、新メンバーが決まったときの。

茨城の子に悪い子はいないよ。あ、モー娘。の話とは全然関係ないけどね。