バルーンファイト

昨日スカパーで『タクシードライバー』をやっていたので見る。『ストレンジャー・ザン・パラダイス』が83年、『タクシードライバー』は76年だが、そういう目で見ると同じに見える。絶対に未来への希望を描いてはいないし、絶望も描いてはいない。描いたのだとしたら、あまりにもうまく映しすぎて、存在しないものが映らなかったということになるだろう。でもおバカなトラヴィスは大好き。他者の洪水に飲まれながらも、手の届く道徳によって頑丈な自己(マスコミ発)を見いだすという点は、まさに現代人生き方マニュアルの模範解答だ。希望も絶望も匙加減一つ。

終電もなくなったころ歌舞伎町を歩いていると、客引きに紛れて二人組みのホストが声をかけてきた。ホストはカオではないのだなという事実が、彼らが、僕らに、体験入店を迫る(裏があるのか知らないが)という行為だけでも理解できる。

信用できない人間に対して攻撃性を持ってしまうのは悪い癖だと反省。入ったところで今あななたちがやってるようなことやりたくないもん、と言って空気を凍らせ、でも来月から100万とか入りますっよ、ソープとか行き放題。という軽口には「汚い金」という単語が滑り出す寸前だった。

「君はもっと自分を貶めたほうがいい、そうしないと敵ばかり増えることになる」と『恋に落ちたら』でデ・ニーロ(変換したら勝手に「・」が入る)がビル・マーレーに言っていたのを思い出す。貶める自分って、トラヴィスが作り上げたような、主にメディアからの情報で外側を固めた虚像で、それを膨らませたり萎めたりというのが、社会的コミュニケーションだというのでしょうか。

あいにく持ち合わせがありません(FUCK YOU)。