チェリーウィンド

15年以上昔に親戚のおばさんか何かにもらったパーカを、いつからか古着として着るようになり、今日もそれを着ている。普通に着ていた時と古着として着るようになった時にはそれなりのブランクがあったように思うのだが、定かではなかった。

昼間、何の気なしに袖の匂いをかぐと、湯をたっぷり溜めたバスタブの栓を一瞬だけ抜いた時のように、記憶の断片が流れ込んできた。

アニメージュスタジオ。故郷、広島で長年にわたってアニメファンのメッカとなっていたアニメショップである。月に一度、当時住んでいた田舎から片道1200円かけて(時には55円だけで誤魔化したりしつつ)バスで通い、幽々白書セーラームーンのグッズを買うため、一度で平均5千円ずつ落としていた。

やはり匂いというのは記憶に直結しているのだな、しかしこの仕立ての良いパーカの繊維の中に、微かながら当時の匂いが残っていたというのはちょっとした奇跡だ。

などとぼんやり考えながら歩き、たどり着いたのはこのところ毎日通っている渋谷アニメイト

・・・。

当時の匂いが残っていたのはパーカの繊維なのか、DNAの繊維なのか。1/2ずつだということにしておこう。「ニュータイプ」5月号と『瀬戸の花嫁』1巻購入。かけてくれた透明のカバーがピカピカ光って、また何か思い出しそうになって笑って泣いた。