ロックオフ

昼起きて正月に録画した『ダンサー・イン・ザ・ダーク』をようやく見る。これは、前評判とは少し違ったが充分面白い。移民で盲目の女性。動かしがたく「弱者」である主人公のセルマ(ビョーク)だが、そのエゴイズムは健常どころか尋常ではない。「空想」と称して現実をねじ曲げる力は、「バカの壁」という新語の浅はかさを浮き彫りにする。何と言っても殺した人間が、直後に生き返って許してくれ、「お嬢さん、お逃げなさい」だ。

その直後、線路の上でセルマは恋人志願だった男に言う。「もう見るものなんてない」と。北野武の『座頭市』と反対に、彼女は「本当は(医学的には)見えているんじゃないか」とすら思う。見たくないものは見ない。聞きたくないことは聞こえないし、過ごしたくない時間は音楽が流れ、楽しく、過ぎる。

だから「衝撃的」と聞かされていたラストも含む全編通して、この作品は悲劇などではない。喜劇として見るほうがむしろ健全と言えよう。悲劇として見るのは、セルマの「一人称」ぶりに引っ張られすぎだろう。一歩引いてみれば、いや、無駄な涙を拭いさえすれば、そこには全てエゴイズムの元に行動する登場人物たちの姿が見て取れるはず。この作品の監督が『ドッグヴィル』(未見だけど)へ向かうのは自然だと思った。

「映画のラストは嫌い。だから終わる寸前、空撮になった時に映画館を出ればいい。そうすればずっと映画の中にいられるの」というセルマの弱さには、しかし、共感せずにはいられないのだが。

見終わると夕方。「ヨン様騒動」にプチ恐怖を覚える。根本的な意味ではなく、「教育」は何の役割も果たしていないのである。

新宿へ。なぜか厳戒態勢の歌舞伎町で食事&ダーツ。食事は厳戒態勢だからか空いていた「神座」へ初めて。「もやしラーメン」を注文。安くて量があるので空いていたらまた来たい。

帰宅して、今朝歌舞伎町で24歳の暴力団が射殺されていたことを知る。そういえば今日は妙に「歌舞伎町!」という風を感じた。この街が何を糧にして生きているのかということだろう。

さらにイラクで日本人が人質に。『24』より面白くなってきた。どう出る自衛隊。今日「キャンプ爆撃」のニュースをテレビで見ていると「(爆撃の瞬間)演習の時みたいな音がして驚いた」みたいなことを言ってる派遣自衛官が。どうやら自衛隊には「それ以前に!」という絨毯ツッコミが必要なようだ。

きっちり『24』を見る。途中、強く視聴を奨めていた友人からメールが届く。

「あんな妹は、たとえ腹違いでもいないと思います」

何の話かって、今強く奨める番組といえばテレビ朝日木曜深夜放送中の『恋風』である。今日はイラク問題で10分押しのスタート。録画に成功していたので落ち着き払って答える。

ハリー・ポッターだって“いない”と思うがね」

いないから、いる。そういうことが「ヨン様」を追いかける主婦には分かっていないのだ。

ただ、148cmのどう見ても中学生にしか見えない27歳の国語教師、とか、片思いの末、大好きな彼の右手になってしまった美少女、とかは、この日本に「本当に」いると思います。姉妹制度のある女子高、も、ある程度情報は掴んでいる。

雑事をこなして就寝。