インスタントカーマ

極寒の新宿で4時間くらいダーツ。先週と同じ3人で、肉まん、たこ焼き、ケーキなどを賭けて。矢が壊れたためすごく調子悪く、獲得した商品は「雪見だいふく」と「ガリガリ君」だけ。丁重に辞退した。

外に出てラーメンを食うともう2時。東口にある「ダイキン」の看板に着いている温度計は6℃を示しているが、体感温度はもっと低い。マフラーを締め直しながら歩いていると、道のど真ん中に倒れたホームレスらしき老人が。すわ、行き倒れかと思いながら通り過ぎると、その付近だけ妙に生暖かい。

この老人、地下からの暖かい空気が出てくる通気孔(マリリンモンローのスカートに風を送る所)の上で寝ていたのだ。ここなら少なくとも凍死することはない。しかし、おそらくあまり体によくないガスが含まれているようで、その暖かい空気は、歩いて通り過ぎるだけでも少し息を止めたくなるほどの悪臭だ。一晩中吸い続けるのは危険だろう。今日のように、急に寒波が襲ってきたときの苦肉の策なのではないだろうか。

などと思いながら、マッチ売りの少女はどうして売春しなかったのかという議論をふっかける。

「まあ、マッチというのが男根の比喩だと考えるのが自然だろうな」
「どうしてそれで幸福を得られたのよ?」
「それは、淫乱だったからだろう」
「マッチ売りの少女はそんな子じゃないですよ!」

結論としては、『赤ずきん』の読み過ぎで貞操観念が肥大していたんではないかということに。「妥当です!」と三人が声をそろえると同時に、後方からモンロー調の「ハッピーバースデー」が聞こえてくる。・・・あのおじいさん、今日が誕生日だったんだ!

予想はしていたが、振り返った途端に音楽は消え、老人は相変わらず通気孔の上で仰向けになっている。数十秒前と変わらない光景。ただひとつ変わっていたのは、「ダイキン」の温度計が7℃を示していたことだけだった。