はがれる。

渋谷の啓文堂。「ヒロシです…」と声がした方を向くと、
4年生くらいの、褐色の肌の男の子が『ヒロシです。2』を立ち読みしていた。10秒ほど黙読し、「はぁ〜ぁ」とため息をつくと、去っていった。え、好きなん嫌いなん?

たぶん、最初の「ヒロシです…」は、「あ、『ヒロシです…』ねぇ。やってるやってる」の「ヒロシです…」で、黙読しても、おそらく多くが小学生に分かるネタではないので理解できず、ただ最初に上から行ってしまった以上引けず、最後「まあ、オレの方が面白いし」というため息が出たのではないか。

ベリ。彼と現実とがはがれる音が聞こえた気がした。こうして少年は成長し、ベリベリと現実からはがれ、若いからまたくっつくけど繰り返すうちに粘着力も落ち、ぺらぺらになって、サラリーマンになっていくんだろう。バイバイ、クラスで一番面白い奴。